2019年12月27日号。<拉致被害者生存のスクープをどう見るか / 輝いていない日々 第25回:花房観音>

 おはようございます。ヨロンです。

 昨夜の血気酒会は、スタッフ無しで7秒間隔の自動スイッチングしながら、特に問題無く配信できました。
https://www.youtube.com/watch?v=mPr-Szi2BxI

 例によってギリギリのタイミングで入ってきたT-1君が「今年の重大ニュースを振り返りましょう」とホワイトボードに書き始めたので、最初の30分ほどは大きなニュースを振り返り、そこからの30分で地方創生などについて話し合いました。
 忘年会スペシャルということで、堅い話にはならなかったのですが、私が危惧している(洒落ではない)日本滅亡は免れて、この先人口減少は下げ止まり、人口規模に合った国になるというサルバトーレ西村君の見通しは、希望を持たせてくれるものでした。
 木村敬さんは、さすが総務官僚(本人の希望で総務省職員)ならではの見識とコメントで、公務員とは思えない突っ込んだ内容もあり、とても興味深かった。
 配信の後半1時間は、ギャラリーのみなさんも入れての忘年会モードとなりました。酔いも進み、「これはヤバいんじゃないか」という話も出てきましたが、おそらくほとんど見られていないだろうということで、そのままにしておきます。行き過ぎた発言があっても、酒の上での話ということで勘弁して下さい(苦笑)。

 配信が終了し、カオスな話で盛り上って2時間ほど。終電間際になってからのT-1君の酔いは絶好調。私のギターを奥から持ち出してきて「弾き語りをしよう」と言いだしたので何曲か演ったのですが、帰るときになって私のiPhoneが無くなっていたことに気が付きました。探していたら終電を逃し、途中からタクシーで帰宅したら1時半。寝たのは2時半となってしまいました。それでも、iPhoneは今朝になって無事が確認されたので良かった。
 もともと、ほとんど使用しない電話とワンタイムパスワードアプリ以外はiPadに入れてあるので、1日くらいだったらなんとかなるのですが、スマホが無くなってみると、その不安は大きく、完全に依存していることに改めて気付かされます。結果としていい経験ができました。

 今朝は、ここでサラッと観音さんのコラムに行こうとしたのですが、気になるスクープがあったので取り上げておきます。
<北朝鮮拉致情報、政府高官が封印~田中実さんら2人生存、首相了承>
https://this.kiji.is/583036916404716641?c=39546741839462401
<拉致問題を巡り北朝鮮が2014年、日本が被害者に認定している田中実さん=失踪当時(28)=ら2人の「生存情報」を非公式に日本政府に伝えた際、政府高官が「(2人の情報だけでは内容が少なく)国民の理解を得るのは難しい」として非公表にすると決めていたことが26日、分かった。安倍晋三首相も了承していた。>

「国民の理解を得るのは難しい」というのは、生存していても取り返すことが困難なので、そのままにしておこうということなのでしょうか。
 これは勝谷さんだったら激怒するでしょうね。帰ってこられるかどうかは別として、同胞が生存していたというニュースは、他の拉致被害者の救出に向けた希望となるもの。しかも北朝鮮から生存情報が伝えられたということは、ルートが有ることになる。日本政府としては、さらなる拉致被害者の情報を強く求めていくべきでしょう。
 最近になって安倍首相が「条件を設けず、金正恩氏と会う」と言っているのはなんなのか。私は以前から「安倍さんは拉致被害者を救出する気は無いよ。選挙や支持率を上げたいときに持ち出すだけ」と勝谷さんに言うと彼は黙っていましたが、少なくとも日本政府は被害者家族に報告すべきだったのではないか。横田滋さんと早紀江さんは、めぐみさんが無事でいる可能性を1%でも感じることができたことでしょう。
 ニュースとしては小さいものですが、これは重要な事実として注目されるべきものだと思うのです。みなさんはどうお考えですか。

 観音さんの今年を締めくくるコラム。この一年間、観音さんとは何度も勝谷さんのことでやり取りをしてきました。やはり、一番気になっていたのは小説のこと。もう本当のことは聞けないので想像するしかないのですが、それでも何で書けなかったのか、書かなかったのか、これはこの先も考え続けるのでしょう。私たちが生きている間は。

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 輝いていない日々 第25回

 花房観音(小説家)

 12月は毎年なにかしらバタバタしており、忘年会なにそれ? 大掃除むり! という状況です。
 仕事の告知ですが、先週16日に発売された「実話ナックルズ ウルトラ」vol.6掲載の連載コラム「おんなの旅」に、大阪十三の思い出を書いています。「実話ナックルズ ウルトラ」表紙はエロいけど、中身は事件物のルポとかあって充実しています。
 大阪十三の思い出……これはよくトークショーなどではネタにするのですが、昔、複数の消費者金融から金を借りて返済に追われ、切羽詰まって「もう売春しかない」と思ったものの、当時男性経験も少なく、「本番のない風俗を」と、SM雑誌に広告が載っていた、大阪十三のSMクラブに面接に行った話です。
 結果的には「女王様」として働くことはなかったんですけど、面白い経験でした。
 あと、今週25日水曜日……クリスマスじゃないですか……発売の「週刊新潮」新年特大号に、実際の事件を官能小説にする「黒い報告書」のページ、書いています。五十代デリヘル嬢の話です。
 クリスマスイブは、文藝春秋に行っておりました。私の仕事の打ち合わせが目的だったのですが、担当の方が、勝谷さんの後輩であり、小説の担当もされていたとのことで、勝谷話になり、イブの夜は、クリスマスムードの中で、思い出してもいたり。

 毎年、この時期になると、SNS等で、「十大ニュース」などを書く人が多いので、私も考えてみたんですけど……一か月前のことすら忘れている……。そして書けないことが多い……。手帳を見ても、取材と締め切りについての書き込みしかない……。
 ただ、今年、書ける範囲での一番の思い出といえば、恐山に行ったことかもしれません。行く前はおどろおどろしいとこかと思ったら、全然違って、清浄な場所でした。八戸と青森駅付近もよかった。取材にかこつけないとなかなか動けないのですが、来年もこうして旅がしたい。
 旅は好きですけれど、実は海外に行ったことがありません。パスポートも作ったことがない。若い頃は金も暇もなかったので、海外旅行なんて自分には縁のないことでした、喫茶店すら入れない生活だったし。小説家になってからは、少しは余裕ができたものの、ずっと忙しくて暇がない。もちろん、時間は作るものだから、その気になったらできるのだけれども、何か目的がないと行動できなくて今にいたります。
 自分の作品が映像化されて、海外の映画祭に出品されたら……なんて思うけど、映像化こけまくってるのでありえないでしょう。
 うちは「海外旅行運のない家」です。両親も海外渡航経験無し。そもそも「旅行」そのものをしない。母曰く「家以外の風呂や布団は苦手」で、金を出すから近場の温泉にでも行ってこいやと言っても「いやー」と拒否されます。
 そして私は4人きょうだいですが、全員海外旅行をした経験がありません。
 一番最初に結婚した下の妹は、新婚旅行でニューヨークに行くはずでした。ところが、結婚式の一か月前に、アメリカで同時多発テロが起こりました。本人たちは気にせず行こうとしたけれど、周りに反対されて、結局、北海道に変更。結婚して子供が次々と出来て、そのまま使われないパスポートは期限切れです。
 次に結婚した上の妹は、結婚式した直後に夫が入院、妹が妊娠……新婚旅行どころではなくなり、その後、4人の子どもを産んで忙しくしています。
 弟は結婚を決めたあとで転勤が決まり、バタバタしてやはり新婚旅行どころじゃなくなり、しばらくして落ち着いてから沖縄に行ったはず。
 私自身は、なにしろ結婚が東日本大震災の直後だったので、旅行どころじゃありませんでした。
 と、本当に「旅行運」のない家族です。
 私が「海外旅行したことないし、別に行きたい場所もない」というと、勝谷さんに「初めての海外はイスラエルがいいよ」とすすめられていたのですが、それもいいかもしれないと思いつつも、まだしばらくは機会がないでしょう。このまま日本を出ずに死ぬのも、それはそれでありかと思うようにもなりました。

 仕事がバタバタしていて、じっくり本を読めない日々が続いているのですが、最近、webで読んで面白かった記事を紹介します。
 AV男優・森林原人さんの文春オンラインのインタビューです。

#1  https://bunshun.jp/articles/-/17970
#2  https://bunshun.jp/articles/-/18874
#3  https://bunshun.jp/articles/-/18897

 森林さんは、子どもの頃から秀才で、中学受験で、筑駒、麻布、ラサール、開成、すべてに合格して、自分は東大に行くものだと思っていました。
 そんな彼がなぜ、「AV男優」の道にすすみ、そこでトップとなったのか。
 これは以前、東良さんも書いてたけど、森林さんは、「灘中、灘校を出て、東大に入れず、早稲田大学在学中に風俗ライターになった」勝谷さんと、重なるところがあります。
 そして優秀な進学校を卒業して東大に入れなかったという複雑な学歴コンプレックスは、森林さんにも、勝谷さんにも強く感じていました。けれど「AV男優」という天職を見つけ、そこでトップとなった森林さんと、テレビに出て有名にはなったけれど、本来やりたいはずの「小説」を書けなかった勝谷さんとの違いについても考えたことがあります。
 勝谷さんが有料メールで灘校話をする度に、「またか」と思っていました。卒業してから何年も経っているのに、「灘、灘」って。灘中、灘校時代が勝谷さんの人生において、とても楽しかったのだろうとはわかるけれど、それでもなんとなくモヤモヤしていました。灘だけではなく、文春についても、元妻自慢も、結局、昔の話ばかりだからです。
 SNSや飲み屋で「昔はよかった」話しかしない人に、「じゃあお前は今は何者だ」って問いたくなることがあります。勝谷さんも、もし小説家として望み通り芥川賞とっていたりしたら、あそこまで灘自慢しなかった気がする。
 森林原人さんが最初の本「偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論」(講談社文庫)を出した際に、このタイトルで、男の人たちの学歴コンプレックスがあぶりだされるのを目の当たりにしました。
 ちなみにサブタイトルを「偏差値78のAV男優」としたのは、編集者で、私も相談されて、「そこはやっぱり、普通のAV男優との差異で、インパクトが強いから」と、押しました。森林さん自身は、謙虚な人なので、「偏差値78なんて、中学時代の話ですよ」と躊躇っていました。
 この本の発売が告知されると、「森林原人て筑駒だったの!」という驚きの声と共に、「AV男優」という世間では恥ずかしいとされる職業に就いている人が、自身より優秀だった衝撃で、「私は偏差値80あります」とか、本を読みもしないのに学歴マウンティングして反応していいた人たちは、全員、男性でした。
 それを眺めながら、卒業して何年たっても、「学歴」にこだわってる男の人って多いんだな、大変だなと思っていました。
 小説家は高学歴の人が多いし、編集者もみんな高学歴ではあるんですが、偏差値が高いからといって、面白い小説、売れる小説を書けるのかといったら、全くそうでないので、あんまり気にすることもなくやれています。
 私が若い頃は、「三高」という言葉があって、「高学歴」「高身長」「高収入」がモテる男の条件だったけれど、未だにそれで男選びする女の人はいるのでしょうか。私は高学歴よりも、今の時代は手に職をつけている人のほうがいいと思うし、高身長とか全然どうでもいいし、高収入は素晴らしいとは思うんですが、金のある男は私を好きにならないのは痛感しているのと、経済的に男に依存したら、死なれたり捨てられたときのダメージが大きいので、働いてくれてたらいいか、ぐらいです。貧乏と借金は、嫌です。懲りてるから。もう消費者金融のお世話になるのは嫌。

 風俗とか借金とかロクでもないネタばかり書いていますが、先日、とてもありがたい場所に呼ばれてきました。
 落語家で天台宗僧侶でもある露の団姫さんが、来年を目途に、尼崎に「道心寺」というお寺を開山されます。悩む人たちの相談にのれる場所を……ということで団姫さんの悲願でした。
 その「道心寺」のご本尊様を刻んでいただく前に、「鑿入れ式」をされるから来ませんか? とお誘いを受けました。ご本尊様を刻む木に、有志たちが鑿を入れるというこの儀式、私のように「好色入道」なんて、巨根の坊主が登場する小説や、デリヘルやSMクラブのコラムなんて書いている、不謹慎の塊みたいな者が行っていいのだろうか……と躊躇いながらも、こんな貴重な機会はない! と、京都三条の「松久宗琳佛所」に向かいました。
 鑿入れ式の場所には、正面にご本尊様の絵が描かれた木があり、団姫さんのご家族や事務所の関係者たちが集まっています。
 私、やっぱり場違いじゃないか……と思っていたら、団姫さんの親友で、子どもには見せられないピンク落語をやっている桂ぽんぽ娘さんがいらして、「私より不謹慎な人が来た」と、ホッとしました。
 そして観音経、般若心経などを唱えながら、ひとりひとりが前に出て、手を合わせ、鑿を入れていきます。
 ご本尊様は、なんと「観音様」でした。
 団姫さんは、「この世から、ひとりでも自殺者を無くすこと」を目標として、仏教落語、講演、執筆活動等に日々邁進しておられます
 道心寺プロジェクト、寄進も募っておりますので、興味がある方はこちらをご覧ください。
http://www.tuyunomaruko.com/doshinji/
開山したら、落語会なども開催されるそうです。

 最後におすすめの本を、一冊。
 三重県に浮かぶ小さな島、渡鹿野島。そこは「売春島」と呼ばれていました。
 私はバスガイドの仕事をきっかけに、「売春島」を知り、いつか渡ってみたい、小説にしたいと願い、二度ひとりで上陸し、「うかれ女島」(新潮社)という小説を書きました。
 この島は、勝谷誠彦の本「色街を呑む」にも「A島」として登場し、私が「売春島にひとりで行った」というと、「よく女ひとりで行くな」と驚かれましたが、現在はリゾート地としての開発もすすみ、家族連れも訪れる安全な場所です。ただ、「廃墟」の島です。
 私が「うかれ女島」を刊行するより前に、「売春島」というそのままのタイトルの本が出て、話題になりました。著者は高木瑞穂さん、丹念に取材を繰り返し、この島に関する噂も検証した重厚なルポです。
 その「売春島」が、文庫になりました。単行本時に謎だったある男についての追加取材も加筆してあります。
「売春島」の歴史は、日本に間違いなく存在する闇の一面でもあります。
 数年前に伊勢志摩サミットがあったときに、ある週刊誌が、売春島のすぐ近くでサミットが行われることについて、志摩市に問い合わせた記事を見ました。回答は、売春の島など、ありません、知りませんと、「そんなわけないだろ!」と突っ込まずにはいられない「綺麗ごと」でした。
 これからも、無かったことにされるであろう、「売春島」。
 けれど、確かに存在した歴史と現在がまとめられた貴重なルポです
 男性にも女性にも読んで欲しい、「売春島」(彩図社文庫)、お正月休みの読書に、いかがでしょうか。

「売春島」(彩図社文庫)
https://www.saiz.co.jp/saizhtml/bookisbn.php?i=4-8013-0420-8

 少し早いですが、これが今年最後の更新になります。
 みなさま、よいお年を。

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